下肢創傷治癒センター(CLTIセンター)
診療内容
創傷、いわゆる「キズ」といっても様々な原因のものがあります。外傷性、血管性(動脈性、静脈性)、神経障害性(糖尿病)、リンパ浮腫など様々です。そのような疾患の患者さまが、これまでどこの診療科に受診してよいかわかりにくいという声もありました。
下肢創傷治癒センターは、足のキズで困っている患者さまの総合窓口になればと考えています。
当センターは、足のキズを精査した上で原因別に分類し、創傷治癒のための局所的治療のみならず、背景にある全身疾患の治療を各診療科で協力して行っていくための体制を構築しています。
特に動脈硬化疾患や糖尿病による足潰瘍に力を入れています。
高齢化や生活習慣病患者の急増により、動脈硬化や糖尿病による足壊疽の患者が増加しております。
近年そういった状態を、包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:Chronic Limb-Threatening Ischemia)と言われ、患者の予後は、1年以内の死亡率25%と悪性疾患に匹敵するほど悪く、死因は下肢の潰瘍ではなく40%~60%が狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患が原因と言われております。当センターでは、特にこの分野に特に力を入れており、できるだけ大切断術を避け、歩行機能を維持するため、積極的に低侵襲なカテーテル治療を行っております。
それと同時に全身血管性病変を早期に治療し、生命予後の延長を図ることを大きな目標としています。
足潰瘍患者には血糖コントロール・血管再建術の他、生命予後延長のため様々な内科的治療が必要で、当センターでは総合病院である強みを生かし、それぞれの診療科が連携し、傷以外の治療にもあたらせていただいております。
なかなか治らない小さな「キズ」が、隠れた全身疾患を表していることもあります。
「キズ」「キズあと」でお悩みの患者さまがいらっしゃれば、一度受診していただくことをお勧めします。
実際の症例
カテーテルによる血行再建及び適切な創部ケアを行った症例
バイパスによる血行再建
カテーテル治療だけではどうしても十分な血流が得られない場合は、バイパス術を施行することもあります。
動脈硬化は全身にあり!当院ではTotal Vascular Careを実践しております。
PAD患者は冠動脈疾患や脳動脈疾患も有する率が高く、特にPAD患者の約半数は冠動脈疾患を合併しています。当院ではTotal Vascular Careを実践しており、質の高い全身血管診療を展開したいと考えております。
PAD患者の3/5は、冠動脈疾患か脳動脈疾患を合併しています。足潰瘍
糖尿病性神経障害、末梢循環障害などが要因となり引き起こされます。高度虚血例は、足潰瘍より壊疽となり、足切断に至ることが少なくありません。各種薬物療法で治療困難な症例は、循環器内科による血管形成術を施行し、歩行機能を維持した状態で治癒するよう努力しております。
足関節部にできる潰瘍は静脈性であることが多いです。その場合は原因である下肢静脈瘤の治療(保存的、外科的)を行ったうえで潰瘍治療を行います。
下肢外傷
一般的な外傷に加え、手術後の離開創などにも対応しております。
リンパ浮腫
がん治療などの二次的なリンパ浮腫と原因不明な原発性があります。治療としては圧迫やドレナージなどの保存的加療が基本・土台となりますが、必要に応じてLUAなどの外科的治療をおこないます。
センター長よりご挨拶
包括的高度慢性下肢虚血(Chronic Lime-Threating Ischemia: CLTI)は、患者さまの生命予後が不良であること、下肢切断に至った場合、患者さまの生活の質を大きく損ねることが知られています。その治療は、従来の縦割り診療では完結することが困難で、複数科が連携して包括的な患者管理を行う必要があります。
当院では、形成外科、心臓病・血管病センターが中心となって下肢創傷治癒センター(CLTIセンター)を設立し、治療困難なCLTIに対して包括的な医療を提供できる体制を構築しました。
CLTIセンターでは、下肢切断を回避し、「歩いて自宅に帰る」ことを治療目標とした包括的医療を提供します。各専門科の得意分野を十分に活かしつつ、患者さまには最善の治療を提供させていただきます。
当センターの最大の特徴として、形成外科医が治療の中心を担い創傷を専門的に管理すること、血行再建術のみならず、腎臓内科による吸着療法や麻酔科による脊髄刺激療法といった集学的治療を迅速に提供できる体制であることが挙げられます。
CLTIの治療成功の鍵は家庭医の皆様による早期発見と早期治療開始にあります。小さな傷でも治らない場合、当センターにご用命いただければ幸いに存じます。
下肢創傷治癒センター センター長
矢野英人
お問い合わせ
[電話番号]047-395-1151(代表)
担当部署:地域医療連携室
受診相談の際には、「下肢創傷治癒センター受診希望」とお伝えください。
担当部署をご案内いたします。