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てんかんセンター

当院では、令和2年4月から院内多職種で構成する「てんかんセンター」を設置し、てんかん患者さまに対する包括的医療を行っております。包括的医療とは診断・治療等の医学的アプローチだけでなく、保健サービス、在宅ケア、リハビリテーション、福祉・介護サービスのすべてを包含する医療のことであり、施設ケア、在宅ケアとの連携により患者さまの生活の質向上を視野に入れた全人的医療を指します。てんかんは、病態が多彩で多くの患者さまには生活上の支障があるという疾患の特質から包括医療が必要であり、包括医療は多職種が連携するてんかんセンターでのみ可能と考えます。

当院では、てんかん医療全般にわたる診断・治療・支援を視野に、患者さまの病状及び生活の質の改善を目的とする活動を行っていきます。

てんかんとは

てんかんは、てんかん発作を主症状とする慢性脳疾患の総称です。てんかん発作は『大脳皮質神経細胞の過剰な放電に由来する反復性の発作』と定義されます。てんかん発作が繰りかえし出現すること、および少なからぬ患者さまで発作以外に神経・精神・心理の障害を合併していることが生活の質を低下させています。世界には5000万人、日本には100万人(人口の約0.8%)のてんかん患者さまがいると言われています。てんかんは、どの年代のどの人にも起こり得るコモンディジーズ(一般的な病気)です。

てんかんの診断と治療には専門的知識が必要です。しかし、我が国特に千葉県にはてんかん専門医が少なく、診療連携が必須です。今後、県内の先生方、特に脳神経内科、小児神経科、精神科、脳神経外科の先生方と協力して、てんかん診療の質向上に努めていきます。

てんかんの病因

てんかんは全年齢で発症する疾患であり病因は様々です。

特発性

半数以上の患者さまでは、先行するあるいは原因となる疾病が無く、特発性てんかんと呼ばれます。多くは年齢依存性で、遺伝的背景をもつことも珍しくありません。

症候性

てんかんの原因となる構造的、代謝的基礎疾患を持つ場合、症候性てんかんと呼びます。

主たる原因は下記の通りです。

  • 頭部外傷(大脳の損傷)(出生時あるいは生後)
  • 中枢神経系感染症
  • 脳血管障害(脳梗塞や脳出血)
  • 脳腫瘍
  • 脳の変性疾患
  • 先天性の大脳皮質形成異常
  • 代謝障害
  • 遺伝性疾患

てんかん発作とその分類

2017年に国際てんかん連盟が、大幅なてんかん発作分類の改編を行いましたので、下記のサイトから閲覧してください

日本てんかん協会

Jea-net.jp/news/6413

てんかんの診断

てんかんの診断には、発作に関する詳細な病歴聴取が必要です。その際、患者さま自身だけでなく、ご家族をはじめとする目撃者の証言が極めて重要です。最近では、ご家族が携帯電話等で撮影した発作時のビデオが重要な情報となっています。てんかんと診断のもと当院に紹介されたが、病歴からてんかんの診断に疑問が生じ、精査の結果てんかん以外の診断となる患者さまも少なくありません。てんかんと鑑別する疾患は、自律神経疾患、心臓循環器疾患、精神疾患、代謝性疾患、薬物・アルコール中毒など多岐にわたります。

てんかんの主な検査

脳波

通常外来で行います。頭皮上に16~21個の電極を装着し、大脳から発生する微弱な電位を記録します。外来脳波では通常、発作を起こしていない時(発作間欠期)の脳波しか記録できません。一方てんかんの確定診断に必要な発作時脳波は、長時間ビデオ脳波検査を行うことにより記録できます。個室に入院していただき、発作症状をビデオで撮影し、発作に同期する脳波を記録します。発作時脳波記録はてんかんの診断確定や外科治療には必須の検査です。当院では、発作時脳波を記録できるビデオ脳波計を導入します。

MRI

脳の構造を調べる検査です。大脳の微細な形成異常や、脳血管障害、腫瘍、外傷などてんかんの病因検索に有用です。

血液検査

抗てんかん薬による臓器や血液への影響(副作用)の検索、抗てんかん薬の血中濃度測定による薬剤投与量の調節等を目的として行います

てんかんの治療

薬物療法

てんかん治療の基本は抗てんかん薬による薬物療法です。患者さまの発作型に応じて適切な薬剤を選択します。通常単剤治療を原則としますが、発作が抑制できない場合は2剤以上の抗てんかん薬による多剤投与をする場合もあります。

外科治療

適切な抗てんかん薬を2剤以上1年間使用しても、生活に支障のある発作が残存する場合、薬剤抵抗性てんかんと診断し、てんかん外科的手術を考慮します。全体の約20%の患者さまが薬剤抵抗性です。患者さまそれぞれの発作型、病変、神経・精神症状に合わせて適切な手術を計画します。生活に支障を来たすような神経脱落症状を出現させることなく、発作の消失~減少や発作重症度の軽減が得られる場合のみ、てんかん外科手術の適応となります。したがって、薬剤抵抗性てんかんのすべてに外科治療が行われるわけではありません。てんかんの外科的手術の対象となるてんかんは、発作型、焦点の部位、病変の有無から以下のように分類されます。

  • 内側側頭葉てんかん
  • 器質病変が検出された部分てんかん
  • 器質病変を認めない部分てんかん
  • 一側半球の広範な病変による部分てんかん
  • 失立発作をともなう難治てんかん

(てんかん診療ガイドライン2018から引用)

手術法は、大きく分けて以下の3つになります。必要に応じて組み合わせて術式を考案します。

焦点切除術

発作起始に一致して脳波の異常放電が発生する脳の部位を焦点と呼び、焦点を切り取る手術を焦点切除術といいます。根治的手術です。

遮断手術

遮断手術は脳の発火が伝わる経路を断ち切る術式で緩和的手術です。器質病変を認めない部分てんかん

迷走神経刺激療法

植え込み型電気刺激装置によって左頸部迷走神経を刺激し、発作の減少、軽減する緩和的手術です。

てんかんのある人が受けられる公的援助

障害年金制度

病気やケガなどで、日常生活に支障があったり、今まで通り働くことが難しくなった場合などに一定の条件を満たしていれば受けられる制度です。

精神障害者保健福祉手帳

てんかんのある人が一定の障害状態にあることを証明するもので、福祉サービスの利用各種減税制度の運用を可能にする証明でもあります。

自立支援医療制度

指定された医療機関(原則1か所)の外来受診で医療費の減額が受けられる制度です。
詳しくは以下にお問合せ下さい。

公益社団法人日本てんかん協会(波の会)

[相談専用電話]
03-3232-3811(毎週:月・水・金13:15~17:00)

てんかんに関するコンサルティング

家庭生活、社会生活、運転免許証、妊娠・出産などについての相談に応じます。

初診ご予約の場合

1.お申込み

紹介元医療機関から、地域医療連携室(047-398-8011)にお電話の上、FAXにて診療情報提供書の送信をお願いいたします。

2.外来予約日の決定(※完全予約制: 月・火曜AMのみ)

予約枠に制限があり、ご希望に添えない場合がございます。
ご予約日は、今までの治療経過や残薬日数などを医師確認の上、日程調整を行います。
ご連絡は、後日となりますので、予めご了承ください。

3.ホームページから問診票をダウンロードしていただき、患者さまにお渡しください。

患者さまに問診票を受診日までに記入して頂き、受診日当日にご持参いただくようお伝えください。

4.日程のご連絡

患者様もしくはご指定のご連絡先へ確定した予約日のご案内をいたします。

問診票のダウンロード

下記より問診票がダウンロードできますので、ご利用ください。

問診票

患者さまに受診当日持参していただくもの
  • 診療情報提供書(紹介状)
  • 画像データ ※過去に撮影し、お手元にあるデータもすべてお持ちください。
  • マイナンバーカード(健康保険証)、各種医療証
  • お薬手帳
  • 記入して頂いた問診票
  • 母子手帳

事前予約の受付時間

お問い合わせ先

地域医療連携室
直通TEL:047-398-8011 / 直通FAX:47-398-8058
※患者様からのお問い合わせの場合は、代表TEL︓047-395-1151へお願いいたします。

月~金8:30~17:30
8:30~12:30

Q&A

発作が起きたときは、どうしたらいいでしょうか?

多くの場合、あわてる必要はありません。病院での治療をしなくても5分ほどで落ち着く場合がほとんどです。ただし、普段認めない大きなけいれん(強直・間代発作など)が見られた場合や、発作が5分以上続く場合には、緊急の処置が必要となりますので、迷わず救急車を呼ぶようにして下さい。
また、発作時に使用する薬が医師より処方されていれば、指示通り投与して下さい。

てんかんを疑ったらどの病院の何科を受診すればよいですか?

一般的にこどもなら小児科、思春期を過ぎたら神経内科・脳外科・精神科ですが、いずれの場合も、てんかん専門医あるいは神経、精神系の専門医のいる施設の受診をお勧めします。

てんかんと診断されたら車は運転できませんか?

2002年6月1日施行の法改正により、てんかんの病状によっては運転免許の取得が可能となりました。詳細は主治医にお尋ねください。

医師紹介

てんかんセンター長、脳神経外科

峯 清一郎(みね せいいちろう)

専門分野 てんかん外科治療・てんかん包括的医療、頭蓋底腫瘍の外科(眼窩内腫瘍)
略歴 昭和55年 千葉大学医学部卒業 脳神経外科教室入局
昭和60年 東京都神経科学総合研究所神経生理学研究室
昭和61年 千葉大学医学部附属病院脳神経外科助手
昭和62年 日本大学医学部生理学助手
平成4年 米国ジョンズ・ホプキンス大学病院 リサーチフェロー 脳神経外科
平成5年 千葉大学医学部脳神経外科学助手
平成11年 千葉大学医学部附属病院脳神経外科講師
平成20年 千葉大学大学院医学研究院脳神経外科学准教授
平成20年 千葉県立佐原病院診療部長
平成26年 千葉県立佐原病院医療局長
平成28年 千葉県循環器病センター医療局長
平成30年 千葉県循環器病センター副病院長、てんかんセンター長
令和2年 行徳総合病院てんかんセンター長
資格
  • 日本脳神経外科学会専門医・指導医
  • 日本てんかん学会専門医・指導医
  • 迷走神経刺激療法資格認定医
  • 医学博士
  • 千葉県循環器病センターてんかんセンター特任センター長
  • 千葉県てんかん治療連携協議会会長
  • 臨床研修指導医
  • 第1回てんかんに対する脳深部刺激療法(DBS)技術講習会(適応判断と調整)修了
  • 認知症サポート医
所属学会
  • 日本脳神経外科学会
  • 日本脳神経外科コングレス
  • 日本てんかん学会
  • 日本てんかん外科学会(名誉会員)
  • 日本てんかんフォーラム(世話人)
  • 日本頭蓋底外科学会