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肛門外科

おしりでお悩みの方に

おしりの悩みはたくさんの人がかかえている問題です。3人に1人は痔で悩んでいます。
しかし、診察を受けるのが恥ずかしい、いずれ治るだろうと思って症状が悪化してから病院にくる患者さまが少なくありません。肛門は食事の通過する消化管の一番終わりに位置し、便やガスの排泄を調節するとても大切な器官です。そのため、ひとたび調子が悪くなると私たちの生活の質にさまざまな支障をきたすことにつながります。
おしりに違和感がある、痛い、出血がある、膿がでてくる、痒い、便漏れがあるなどの症状があれば気兼ねなく当院外科を受診してください。

痔核(じかく)

私たちの体は、通常便が漏れないように肛門は閉じていますが、これは肛門周囲の筋肉や組織の他にクッションとして血管の集合体(静脈叢)が関与しています。いぼ痔(痔核)とは、このクッションとしての役割のある静脈叢(内痔静脈叢や外痔静脈叢)が鬱血し、膨らんでくる病気です。症状として出血、脱出、痛みなどの症状があります。
ひとくちに痔核といっても歯状線より内側(直腸側)にできる痔核を内痔核、外側(肛門側)にできる痔核を外痔核といいます。歯状線にまたがる痔核を内外痔核といいます。内痔核は通常痛みを伴わないことが多いですが、外痔核は激しい痛みを伴います。

治療

痔核はその程度によってGrade1-4に分類されます。基本は保存的加療(生活習慣の改善と軟膏治療)により症状緩和を図りますが、長期間脱出を認める痔核や頻回の出血を生じる痔核、痔核により生活の質(QOL)が低下している場合は手術切除をお勧めします。 当院の痔核手術は、①結紮切除術(半閉鎖法)、②ALTA(ジオン)硬化療法③ALTA(ジオン)硬化療法+痔核結紮切除術を組み合わせた併用療法を主に行っております。
痔核の状態は患者さまにより多種多様で、同じ状態の痔はありません。痔核に対しての手術方法はそれぞれ利点欠点があり、その利点欠点、患者さまの痔の状態を十分に検討し、更に患者さまの希望(根治性を優先するか、入院期間や術後の疼痛減少を優先するのか)も加味して総合的に手術方法を決定していきます。
激しい痛みの伴う血栓性外痔核の場合は軟膏治療の他に外来で血栓除去手術を行っています(治療時間は5-10分程度の日帰り手術です)。

1. 痔核結紮切除術(LE:Ligation and Excision)

〈入院期間〉3日~7日程度

痔核切除し、痔核の原因となっている大元の血管(痔動脈)を結紮します。切除した傷は術後に溶ける吸収糸で縫って閉じます。最も再発の少ない痔核の手術とされています。
複数の大きな痔核がある場合は切除範囲が大きくなり、肛門狭窄を来すことがありますが、当院では肛門上皮の切除はできるだけ小範囲にとどめ痔核成分を核出する方法をとっております。

2. ALTA(ジオン)硬化療法

〈入院期間〉3日程度

ALTA(ジオン)という注射を内痔核周囲に4箇所注射し内痔核を固めてしまう治療法です。日本大腸肛門病学会の指定する四段階注射法の講習会を受けた医師だけが行うことのできる治療法です。肛門の外側にある外痔核に対しては痛みが強くなるため通常使えません。また脱出程度の少ない痔核のみ適応があります。再発率は1年後に15%との報告があります。

3. 痔核結紮切除術(LE)+ALTA(ジオン)硬化療法

〈入院期間〉3日~7日程度

近年急速に普及しつつある新しい治療法です。結紮切除術とALTA硬化療法のそれぞれ良い点を利用し併用したハイブリッド手術といえます。当院で行っている痔核手術のほとんどでこの手術方法を用いています。

痔瘻(じろう)

痔瘻(あな痔)とは、直腸と肛門周囲の皮膚をつなぐ穴が開いてトンネルができてしまう病気です。初期の段階は肛門の周囲に膿がたまる「肛門周囲膿瘍」と言われますが、進行して慢性化すると痔瘻となります。痔瘻は、痔核や裂肛と異なり、薬では治すことはできません。手術を行わずに放置しておくと感染遷延化し、肛門変形の原因となります。まれに癌化するもあります(痔瘻癌)。痔瘻癌は一般の肛門癌に比べ、悪性度が高いことが多く見受けられるため痔瘻の診断がつけば速やかに手術加療が必要となります。

痔瘻分類(隅越分類)
I:皮下または粘膜下痔瘻L:皮下痔瘻
H:粘膜下痔瘻
II:内外括約筋間痔瘻L:低位筋間痔瘻
S:単純
C:複雑
H:高位筋間痔瘻 S:単純
C:複雑
III:肛門挙筋下痔瘻U:片側のものS:単純
C:複雑

B:両側のもの
S:単純
C:複雑
IV:肛門挙筋上痔瘻

原因

肛門の中には粘液を出す「肛門腺」と呼ばれる腺があります。通常肛門腺のある小さなへこみ(肛門陰窩)に便が入り込むことはありませんが、下痢をしていると肛門腺に大腸菌などの細菌が入り込むことがあります。この肛門腺に細菌が入った際に、付近に傷があったり、体の抵抗力が弱っていたりしていると、感染を起こして化膿し(Cypt-glandular infection theory)、肛門周囲膿瘍になります。さらに肛門周囲膿瘍が進行し、肛門の内外をつなぐトンネルができると、痔瘻となります。

症状

排便に関係なくお尻がはれて痛む、高熱が出る、肛門から膿が出てくるなどの症状があります。まず肛門の周囲が化膿して膿がたまり、お尻がはれて激しい痛みがあります。ふれると痛みがさらに増強します。やがて皮膚が破れて膿が出てきます。たまった膿が出ると症状は一旦軽減し、楽になりますが治癒したわけではありません。痔瘻が慢性化すると肛門変形をきたし排便困難など肛門の機能障害をおこすことがあります。

手術

痔瘻の手術(特に複雑痔瘻)は専門性が高く、高度な技術と経験が必要になります。その後、痔瘻の状態に応じて、主に以下の手術を行っています。入院手術の場合、通常入院期間は4~7日程度です。(ただし複雑痔瘻の場合2週間程度の入院になる場合もあります。)

1. 切開開放術(Lay open)

〈入院期間〉3日程度

痔瘻の手術で最も再発が少ない手術法です。再発率は1~2%です。ただし肛門括約筋をある程度切り離してしまうため、一般的には括約筋の影響が少ない肛門の後ろ側にできた痔瘻に対して行います。

2. 肛門括約筋温存術(Coring Out)

〈入院期間〉3日~5日程度

肛門の後方以外の痔瘻に対しては肛門括約筋を切断しない方法で手術を行います。
瘻管を切開せずにくり抜いて、さらに1次口を縫い合わせて閉じる方法です。 括約筋の損傷が理論上ありませんので、術後の肛門機能だけを考えればよい方法ですが、再発率が15%程度と高いことが欠点です。

3. Seton法(Tight Seton/drainage Seton)

〈入院期間〉5日程度

痔瘻のトンネル(瘻管)にゴムを通して、生体の異物除去反応を利用し、痔瘻を治していく手術法です。痔瘻が深い場合や複雑な場合に用います。理論上肛門括約筋は温存できますが、治療に時間を要します。

4. SIFT-IS法(肛門上皮括約筋温存手術)

〈入院期間〉5日程度

東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター(旧社会保険中央総合病院大腸肛門病センター)の佐原力三郎先生が考案した手術法です。肛門上皮を温存し、痔瘻の入り口で瘻管を切離して痔瘻を直す方法です。肛門括約筋への影響はごく軽度で究極の低侵襲(体に負担のかからない)治療法です。
当院では適応のある患者さまにはこのSIFT-IS法を用い治療を行っています。

裂肛(れっこう)

裂肛(きれ痔)とは肛門の出口付近の皮膚が切れた状態です。女性に多い病気です。

原因

便秘による硬便の通過や、下痢便の強い勢いなどで、肛門の出口付近が切れ、直腸肛門部の血液循環が悪くなることが原因です。肛門出口近辺の皮膚は肛門内部の粘膜と違い、知覚神経が通っているため、裂肛には、激しい痛みが伴います。便秘気味の方は、裂肛が慢性化して悪化する傾向があります。鋭い痛みが走るため、排便を我慢してしまい、便秘を引き起こします。すると便秘のために便は硬くなり、肛門を傷つけやすくなります。こうした悪循環で、さらに悪化し、治りにくくなることがあります。

裂肛には急性裂肛、慢性裂肛、肛門狭窄の3段階があります。
急性裂肛の多くは薬で治すことができます。
慢性裂肛は薬で治る可能性が低くなり、薬で治らなければ手術を考えます。
肛門狭窄は薬では治らず、手術しか治す方法はありません。
慢性化し、悪化してしまう前にご相談いただき、薬で治せるものは治したほうが体への負担が少ないと思います。
病状に応じて、一般的には裂肛切除+皮膚弁移動術、側方皮下内肛門括約筋切開術などを行います。入院の場合、いずれも4日間程度の入院期間です。

手術

1. 裂肛切除+皮膚弁移動術(Sliding Skin Graft:SSG)

〈入院期間〉3日~5日程度

裂肛部分を切除し、創部に近くの皮膚部分を移動させてもってくることで、肛門部分が拡がることになります。スライドさせた皮膚の近くに三日月状の減張切開を行ってテンションを解除して、皮膚が肛門に寄りやすくします。

2. 裂肛切除+側方皮下内肛門括約筋切開術(Lateral Subctaneous Internal Sphincterotomy;LSIS)

〈入院期間〉3日~5日程度

薬物療法を行っても裂肛が繰り返されるケースでは、内外肛門括約筋の過緊張があって切れやすくなっていることがわかっています。
裂肛部分を切除し、内括約筋の一部を側方切開し、狭くなっている肛門を少し拡げます。

その他肛門疾患

直腸脱、直腸粘膜脱、尖圭コンジローマ、肛門ポリープ、膿皮症、毛巣洞、皮膚湿疹、便失禁などたくさんの肛門疾患があります。

当科では患者さまの生活の質を第一優先に、できる限り体に負担のかからない治療法を選択したいと考えています。
おしりでお困りの事がございましたら、お一人で悩まずにまずは当科を受診してください。

医師紹介

消化器外科、大腸肛門外科

森岡 広嗣(もりおか ひろつぐ)

行徳総合病院では肛門疾患を専門に診察しております。どうぞよろしくお願いいたします。

専門分野 消化器外科、大腸肛門外科
略歴 平成21年 藤田保健衛生大学医学部 卒業
平成21年 高松赤十字病院 消化器外科
平成21年 京都大学 外科交流センター
平成27年 東京山手メディカルセンター 大腸肛門病センター医員
平成28年 東京臨海病院 外科医員
資格
  • 日本外科学会専門医
  • 日本消化器外科学会専門医・指導医
  • 日本大腸肛門病学会専門医(Ⅱb領域)
  • 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
  • 日本腹部救急医学会認定医・評議員
  • 日本臨床肛門病学会認定医
  • 日本感染症学会感染制御医(ICD)
  • 難病指定医(東京都)
  • 身体障害者指定医(ぼうこう又は直腸機能障害)
  • 仙骨刺激療法講習会修了
  • ALTA四段階注射法講習会修了
  • 日本救急医学会ICLSコース修了
所属学会
  • 日本外科学会
  • 日本消化器外科学会
  • 日本内視鏡外科学会
  • 日本大腸肛門病学会
  • 日本肝胆膵外科学会
  • 日本臨床外科学会
  • 日本腹部救急医学会
  • 日本外傷外科学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本ロボット外科学会